<登場人物>
奏:女性。かなで。
永久:男性。とわ。
奏:暗い空に色鮮やかな光が散っては消える。それは、まるで君みたいだと思った。
私の心に光をともして、そして消えてしまった。
ー花火の帰り道ー
永久:「花火、綺麗だったね」
奏:「うん。また、来年も見ようね」
永久:「見れるかなぁ…」
奏:「見れるよ!…見よう」
永久:「…うん。」
奏:「ねぇ、永久。一緒に住もう」
永久:「えっ。でも…」
奏:「永久の残りの時間、全部私に頂戴?」
永久:「消えるんだから、もったいないよ」
奏:「嫌だ。お願い、永久の残りの時間を私に頂戴。それくらいのワガママ聞いてよ」
永久:「ありがとう。…じゃあ、俺の一生のお願いだ。俺の残りの時間を一緒に過ごして」
奏:「…ばかっ。当たり前じゃない!私が永久の残りの時間をほしいっていったんだから」
永久:「じゃあ、できるだけ早く新しい部屋探しに行こうか」
奏:「すぐがいい。明日、行こう」
永久:「いいよ。じゃあ、明日行こうね」
永久:そう言って、すぐに部屋を決めて、家具も揃えた。キッチンからリビングがみえるように、そしてリビングには二人で座れるソファを置いた。
奏:寝室にはセミダブルベット。永久とできるだけ、二人でいれるように。永久の残り少ない時間、できるだけ傍にいれるようにしていた。
永久:奏が傍にいてくれて、毎日が幸せだった。それと同時に襲いかかる罪悪感もあった。俺が、奏を縛ってるんじゃないかって…
奏:「永久。最近悩み事でもある?なんだか浮かない顔してる…それとも、体調悪い?」
永久:「体調は大丈夫」
奏:「じゃあ、どうしたの…?私で聞けることなら聞くよ」
永久:「ねぇ、奏」
奏:「なに?」
永久:「奏は俺が邪魔じゃない?」
奏:「へ?」
永久:「俺をサポートするために、負担になって、邪魔になってない?」
奏:「何言ってんの!永久の傍で、私にできることをしたいの。……永久は私がいると迷惑?」
永久:「そんなことない!…ごめん、弱気になった…」
永久:俺は少しずつ、確実に弱っていった。自分で出来ることが少なくなる度に、奏が笑顔で俺のサポートをしてくれる。奏の言葉はとてもあたたかくて、信じて委ねることにした。
奏:「ねぇ、明日どっか行かない?」
永久:「いいよ。どこに行きたい?」
奏:「んー、ゆっくり散歩したいなぁ。永久は?永久はどこか行きたいところある?」
永久:「俺は、奏と花火を見たあの場所に行きたい」
奏:「あ、私も行きたい。散歩がてら行こう」
永久:「そうだね。朝は、奏の作ったフレンチトーストがいいな」
奏:「ふふっ、いいよ。フレンチトースト、食べれそうなの?」
永久:「奏が作ったやつなら」
奏:「わかった。じゃあ、朝はフレンチトーストを食べてから家を出よう」
永久:「うん。…なんか、そろそろ眠くなってきた」
奏:「じゃあ、明日に備えて寝よう。」
永久:「そう、だね…おやすみ、奏」
奏:「おやすみ、永久」
:
奏:「んっ…ふぁあ~…永久、起きてる?」
永久:「……」
奏:「まだ、寝てるの…。…、ね、え…ねぇ、永久?」
永久:「………」
奏:「永久…?ねぇ、永久…朝だよ?もうそろそろ、起きようよ…。ねぇ…、一緒に朝ごはん食べて、そのあとゆっくり散歩して、花火を見たあの場所に行こうって…言ったじゃん。永久、起きてよ…永久、永久っ!!嫌だよ!!永久ぁ…」
永久:俺は、君の隣で、最期を迎えた。ごめんね、約束を守れなくて…ごめんね…君を…
奏:あの後のことはよく覚えていない。永久の家族と私の家族が手伝ってくれて、いろいろ済んでいった。眠れない夜、いつも隣にいてくれた君はもういない
奏:「永久……っ…永久がいない世界なんて」
不意に、手紙を見つける奏
奏:「……こんなところに、手紙…?これ、永久の字だ…」
永久からの手紙
永久:親愛なる奏へ。君がこれを読んでるとき、俺はきっといないんだろうね。…ごめんね。奏を一人にしてしまって。俺は、君から離れようと思ってたけど、結局甘えて離れられなかったんだ。辛い思いをさせてごめん。最期まで、傍にいてくれて本当にありがとう。
奏:「永久のバカ、一緒にいることを選んだのは私だって…。ちゃんと、行かなきゃ…だよね」
永久:『ねぇ、奏は…俺と、出会えて…幸せだった?』
奏:「永久と出会えて幸せだったよ。永久は、ちゃんと幸せだった?」
永久:『もちろんだよ。ごめんね。少しの間しかいれなくて…』
奏:「本当は永久とね、結婚したかったの。でも、結婚したいなんて言ったら逃げちゃうでしょ?」
永久:『あは、は…。だって、永遠を誓うのに、俺は向いてないだろ?』
奏:「私はそれでも、永久と結婚したかったよ。結婚式だってしたかった。永久のタキシード姿、絶対カッコイイもん」
永久:『ありがとう。奏のウェディングドレス姿、絶対綺麗だったと思う。いつか、みせてね』
奏:「私、永久以上の人に絶対会えない」
永久:『俺より素敵な人は世の中に沢山いるよ』
奏:「永久じゃないと、嫌…」
永久:『お願いだ、奏。もう居ない俺に縛られないで』
奏:「だから私、永久に胸張って会えるようにするからね」
永久:『奏…俺の事なんて、忘れ…』
奏:「永久は忘れてとか言うだろうけど、本当は忘れて欲しくないことだって分かってる。だから、私は永久を一生覚えてるし、永久が傍にいてくれてるんだって思ってる。これからも永久と生きるからね」
永久:『奏…ありがとう。俺と出会ってくれてありがとう。俺を好きになってくれてありがとう。残りの時間が少ないとわかっても傍にいてくれてありがとう。これからも共に生きるって言ってくれてありがとう。俺は、本当に幸せだったよ』
奏:「永久、私に好きという気持ちを教えてくれてありがとう。ワガママいっぱいいっぱい聞いてくれてありがとう。永久…私に幸せを教えてくれてありがとう。永久がいたから…。正直、永久の後を追ってやろうとも思った」
永久:『えっ!?』
奏:「でもそれは違うなって…。永久と一緒にいた時間を大切にして、これからもできるだけ前を向いて生きていこうと思うよ」
永久:『奏…』
奏:「よし、じゃあそろそろいくね」
永久:『うん。奏の傍にいるけど、時々はここに来てくれると嬉しいな。お墓参り…来てくれてありがとう。奏、愛してるよ』
奏:「永久…?声が聞こえた気がするのは、永久がここに眠ってるから、かな。いや、傍にいてくれてるのかな…。そうだといいな…。…ねぇ、永久。聞こえてる?永久のこと、永遠に愛してる。」
奏:永久が隣で微笑んでくれた気がした。
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